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ムコ多糖症1型治療薬の承認を受けての当会の見解

2006/10/21

10月20日、「ムコ多糖症」1型用治療薬「ラロニターゼ」が、厚生労働省により薬事承認されました。2003年4月30日、アメリカのFDA(日本の厚労省にあたる行政機関)が承認し、この世に「ラロニターゼ」を送り出してから実に3年半。すでに、欧米はもとより多くの諸外国で承認・販売されていた「ラロニターゼ」が、ようやく、やっと日本でも認められることになりました。

「これでようやく患者たちが救われる」と手放しで喜ぶべきところ、だと良かったのですが、現実にはそのような話では全くありません。あまりにも長かった承認までの時間。欧州などではとうの昔に承認・販売が実現しているのに、なぜ先進国のひとつに数えられる日本では、これほどまでに長い時間が費やされることになったのか。

1268日。
途方も無い日数が過ぎ去りました。この間、治療薬無しでの闘病を余儀なくされた日本の患者たちは、一体どれほどの苦しみにさいなまれたでしょうか?
1268日の間に、いくつの尊い命がうしなわれることになってしまったのでしょうか?

長期間「未承認薬」のままであった理由は何であり、責任は誰にあるのか、このことをきちんと検証しなければ、後に続く薬剤のための教訓にすらなりません。

日本でこの薬剤の承認申請をおこなったのは「ジェンザイム・ジャパン」社というアメリカの製薬会社の日本法人です。この会社が、厚労省に承認のための申請書を提出したのは、昨年8月のこと。アメリカですでに認可の実績がある薬の審査申請を行うのに、2年以上もの時間を掛けています。なぜなのでしょうか?この点について、当会は「ジェンザイム・ジャパン」社に対し、今年5月に質問状を提出しました。これに対し、同社は回答こそしましたが、その内容は全て「公開禁止」というものでした。企業による情報公開が奨励される今般、このような対応自体が奇異なものと言わざるをえないのではないでしょうか。

さらに、「ジェンザイム・ジャパン」社が、やっとのことで昨年8月に承認申請を行ってからも、今日まで1年以上の時間が過ぎ去りました。これについては、行政手続の点から見ると明らかに問題があります。

厚労省では、医薬品の承認申請に対する標準処理期間を12ヶ月と定めています。これは、行政手続法という法律で、行政が恣意的に審査期間を引き伸ばすことがないよう、期間設定を行政に課したことから、厚労省自ら設定したもの。しかも、「国民の権利利益の保護に資することを目的」とする行政手続法の趣旨からみて、審査作業の迅速化・期間の短縮化に努力しなければならないのは自明の理。まして進行性の超希少難病ムコ多糖症の場合は、欧米並みの迅速さで対応する必要があります。

しかし、今回の厚労省の審査期間は、昨年の8月の申請から12ヶ月を2ヶ月も超過し、14ヶ月にまで達してしまいました。この事実は、行政手続法遵守の観点から見て、明らかに問題があると言わざるを得ません。

これら問題点の指摘に対し、「ムコ多糖症」の専門医の中には、こんなふうに言う人がいます。「1型の薬で困っているヒトはいないのに、さもみんなが困っているような誤った情報」が流れている、と。たしかに、ムコ多糖症1型患者の中には骨髄移植を済ませている方もおられます。また、治療薬を希望した患者の中には、製薬会社からすでに提供を受けている方もおられます。しかし、もしも仮に、たとえ1人だけであったとしても、日本のどこかで治療薬を待ちわびながら今日まで苦悶の日々を過ごしてきた方がおられたとしたら、どうなのでしょう。日本のムコ多糖症患者は、医療機関や役所で全て把握されているわけではありません。本来はムコ多糖症の患者を案ずる立場にある専門医が「困っているヒトはいない」などとうそぶくこと自体、驚きと失望を禁じえません。

ムコ多糖症としては国内で初のケースとなった1型治療薬が、3年をゆうに越える期間、未承認のままであったことは、動かす事のできない事実です。であれば、全ての関係者が率直にこれを反省し、検証し、改善に向けての努力をしなければならない時なのではないでしょうか。少なくとも誰も困っていなかったなどといって済ませる話ではないのは明白です。

このように、ムコ多糖症1型治療薬が承認されたことで、問題の根本が解決されたわけではありません。既に外国では承認され、安全かつ有効に使用されている治療薬が日本では使えないという現実が、いまなお存在するのです。患者の病状は、この瞬間にも進行している事実を忘れてはいけません。厚労省・申請製薬会社に感謝!と安心できる状況といえるのでしょうか?

ムコ多糖症にはまだまだ未解決問題があり、全てのムコ多糖症患者が医療の恩恵を受けることができない限り、「喜び」はあり得ません。次に続く2型治療薬の早期承認実現に向けて、停滞することは断じて許されません。

患者の生命と健康を守るもの、それは皆さんの“声”。これまで以上に“声”を上げ行動していくことしかありません。直ちに行動しましょう!

ムコ多糖症支援ネットワーク・耀くん基金