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1型治療薬の承認問題について、米国の製薬会社ジェンザイム社から書簡が届きました

2006/05/27

当ホームページ上でも繰り返し指摘して参りましたが、ムコ多糖症1型諸症候群のための治療薬は、アメリカでの承認販売から3年以上がたつ現在も、先進国中唯一、日本でのみ認可がおりていません。このため、日本の患者は、生命にかかわる著しい不利益を被っている状況が続いています。

当会は日本での1型用治療薬の販売権を持ち、この薬の承認申請を行っているジェンザイム・ジャパン社のアメリカ本社に対し、なぜこれほどまでに日本での販売が遅れているのか、そして今後はどうなるのかについて、質問を含む陳情書を提出しました。陳情は、1型治療薬に続き2型ハンター症候群のための治療薬も日本で担当することになるジェンザイム・ジャパン社に対する適切な指導と早期承認実現のための具体的方策を講じることを求めたものです。

この陳情に対し、米国ジェンザイム社は4月19日付けで、ジェンザイム・ジャパン社を通して返信を寄せてくれました。以下、その全文の日本語訳を掲載します。主なポイントは以下の通りです。

  1. 1型用治療薬に関しては、2006年末から翌年初頭、状況によってはそれ以降まで、日本で承認されることはない。(Webサイトによっては専門医が、今年中頃にも承認される見通し、などと発言しているがこれは誤りだということ)。

  2. 日本でのムコ多糖症1型用治療薬は、日本人患者のデータを含まない海外の治験結果だけで承認審査を行う、という話がなにやら画期的な出来事のように伝えられたが、実際には昨年12月から日本での治験が行われており、その結果についての質問と回答が終わらないかぎり、治療薬は承認されない。

ムコネットからの陳情書

はじめまして。
私どもは、「ムコ多糖症支援ネットワーク・耀くん基金」(MPS Network Japan/Yoh's foundation)と申します。日本のムコ多糖症患者(MPS patients)と家族を支援するため、昨年8月に発足した団体です。

すでにご存じかと思いますが、日本ではMPS・I型(typeI)の治療薬「アルドラザイム」(Aldurazyme)の販売・承認に関しまして、大きな問題が起こりました。2003年4月に米・FDAで承認されたこの薬剤は、今に至っても、日本の患者が使えるようになっていません(厚生労働省で審査中)。本薬剤がこれほど長期にわたり販売・使用できない国は、先進国中、日本だけです。今年春以降、日本の厚生労働省も認可の判断を下す予定になっていますが、日本のMPS・I型患者が被った不利益は、多大なるものがあります。これは厚生労働省=行政の問題だけではありません。承認申請書を迅速に提出しなかった、貴社日本法人「ジェンザイム・ジャパン」(Genzyme Japan)社にも大きな責任があると、私たちは考えております。(中略)

進行性の難病である「ムコ多糖症」の患者にとって、(未承認のまま過ぎた)3年という歳月がどのような意味を持つかは、同じライソゾーム病(lysosomal storage disorders)の薬剤を扱われている貴社の皆様にはよくご理解いただいていることかと思います。(中略)患者たちにとりましては、時間の経過は生命に関わる重大事です。その患者たちの生命を救うために、貴社は製薬会社として、大変価値ある企業活動をされているのではないでしょうか?

さて、話を転じまして、今年春頃には(注:今年8月に延期されました)、Shire社がFDAに申請したMPS・II型用酵素補充療法(enzyme replacement therapy)の認可の可否が下される見込みといわれてます。MPS・II型は日本で推計少なくとも100人を越す患者がおり、MPS諸症のうち最大の患者群を形成しています。II型用薬剤の今後の成り行きは、当然のことながら、日本の患者にとりまして目下最大の関心事となっております・・・(中略)

「アルドラザイム」同様、II型の薬剤の日本での販売権を有する貴社日本法人におかれましては、今回は是非、なにとぞ、迅速なる申請手続きを進めていただき、アメリカの患者への販売・投与から遅れること3年以上になる「アルドラザイム」の二の舞とならぬよう、ご尽力いただきたい、というのが、当会からの切なる要望です。今後は、貴社が日本法人への適切な指導を行っていただき、資金的・人的な投資を強化することで、FDAの承認後、一日も早く日本の所管庁に承認申請書を提出してください。(中略)

「貴社日本法人が、治療を求める患者たちの切なる願いを真摯に受けとめ、最大限の企業努力を傾注していただき、日本でのMPS・II型治療薬の早期の承認申請が実現しますよう、ご尽力をお願い致します。

ムコ多糖症支援ネットワーク・耀くん基金

米国・ジェンザイム社からの書簡

拝啓、ムコ多糖症支援ネットワーク・耀くん基金様

ジェンザイム社を代表してお便りを受け取ったこと、及びこの件に関しまして私どもの注意を喚起してくださったことにお礼申し上げます。

わざわざ英文の手紙を書いてくださったことに感謝し、貴基金の日本におけるムコ多糖症(以下MPS)患者に対する真摯な取り組みを十分理解いたしました。Aldurazyme(ムコ多糖症1型用治療薬)とElaprase(況人兌N徒堯砲鬚修譴召貽本のMPSI、MPSII患者の皆様に 一日も早くお届けできるようジェンザイム社ではこれまで一生懸命努力して参りましたことをあらためてお知らせしたいと思います。

日本での1型治療薬Aldurazymeの認可を得るのには実に長くかかることが分かりました。他の先進国では既にAldurazymeが認可されているにも関わらず、日本で通常の認可を得るには複雑で何段階にも渡る手続きを経なければなりません。新薬の効能と安全性を保証するために日本には独自のガイドラインがあり、それらの全ての規制が満たされなければなりません。Aldurazymeが日本で一日もはやく認可されるようにジェンザイム社とジェンザイム日本は総力を挙げて取り組んでおり、これまで大きな進歩を遂げました。厚生労働省、未承認薬使用問題検討会議、並びに医薬品医療機器総合機構(PMDA)との話し合いでは、日本におけるMPSI患者のためのAldurazymeの認可に必要な段取り関して有意義な討論がなされました。

詳しく申し上げますと、昨年8月2日には厚生労働省の勧めにより臨床試験実施申請資料(IND)を提出し、さらにCTD (Common Technical Document: 日本、米国、欧州の医薬品規制当局及び製薬 企業団体が合意した、承認申請資料の共通フォーマット)を8月31日申請いたしました。私どもは昨年十一月に医薬品医療機器総合機構と新薬認可について話し合い、200以上からなる質問事項のリストを受け取りました。現在、日米のジェンザイム社及びBioMarine社(Aldurazymeの製造元製薬会社)の担当者により順次回答を作成しております。目下五巡目の質問事項と取り組んでいるところです。

日本でのムコ多糖症1型用治療薬Aldurazyme認可にのためにAldurazymeの日本患者による治験が必要な事項の一つとなっており、これは昨年12月に開始されました。この治験の結果は定期的に医薬品医療機器総合機構に報告しています。医薬品医療機器総合機構による質問事項への回答は今年の半ばには終了する見込みで、今年末から来年初頭にかけて医薬品医療機器総合機構から何らかの返答を得られるものと期待しています。もし、新たな質問事項が追加された場合は、認可はさらに延期されるかもしれません。

私どもはMPSI患者の皆様が辛い思いをなさっていることは、十分承知しておりますが、同時に関係当局がAldurazymeに関する全ての情報を吟味する機会を得、最終的に患者の皆様がこの新薬によって医療上の恩恵を得るか否かを客観的に判断できるよう必要な手続きをとることも大切だと考えております。

またMPSIIのElapraseに関しましても、同様に日本での緊急の課題であることは十分理解しております。Shire社がアメリカで予定通り認可を受け次第(恐らく早ければ今夏になると思われますが)ジェンザイム社では臨床試験実施申請資料(IND)と新薬の承認申請(NDA)を大至急提出する予定です。

ジェンザイム社では貴協会と同じ目的を分かち合っていることをどうぞご理解ください。私どもはMPS患者皆様の生活の向上を願って最大の努力を続けて行く覚悟でございます。

敬具

2006年4月19日


ムコネットから追記

この書簡にみられる特徴は、「一生懸命努力」、「総力をあげて」「大きな進歩」「最大の努力」などなど、派手な語調の言葉が全面に踊っている点です。それに比して、具体的な努力内容などについてはほとんど記述がなく、承認が今年末以降にずれ込んでしまった、という以外めぼしい内容が含まれていません。特に、遅れに遅れている国内承認問題について、ジェンザイム・ジャパン社の責任に関する記述が全くないというのは、製薬会社という社会的な存在として、いかがなものかと言わざるを得ません。

末筆となりましたが、今回の米国ジェンザイム社への陳情に際しましては、音楽家の三村奈々恵様http://www.nanaemimura.com/index.html )が、仲介の労をとってくださいました。三村様は、当会を支援してくださっている小松亮太さんのご友人で、「マリンバ」という打楽器の分野で世界的に評価の高い演奏家です。 また、英文の翻訳にあたっては、当会メンバーでハワイ在住の片岡由紀夫さんがご尽力くださいました。
お二方に、この場をかりまして、心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

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