HOME > 活動報告一覧 > ムコ多糖症4型モルキオ症候群の研究者に助成金を交付しました

活動報告

ムコ多糖症4型モルキオ症候群の研究者に助成金を交付しました

皆様にご報告いたします。
5月20日、当法人はムコ多糖症牽膳拭淵皀襯オA症候群)の研究に従事しているセントルイス大学のアドリアーナ・モンターニョ准教授と戸松俊治教授に対し、研究助成金として50万円を交付いたしました。戸松研究室には3度目、モンターニョ准教授の研究に対する助成としては、昨年に続いて2度目となります。

一連の研究の中で注目されるのは、ムコ多糖症治療に効果をあげる経口薬(飲み薬)の開発についてです。詳細は、以下に掲載しました両氏からの特別寄稿をご一読ください。 当法人としましては、ムコ多糖症の治療に貢献する研究が、欧米だけでなく、国内でも活発に行われる事を願ってやみません。
ひとりのためでなく、みんなのために。

08年のスローガンである「もっと耀く毎日へ」が実現するよう、これからも当法人は、志ある研究者・医療者を支援してまいります。皆様におかれましては、これまで以上のご理解とご支援をお寄せいただけますよう、心よりお願い申し上げます。

NPO法人ムコ多糖症支援ネットワーク

特別寄稿:ムコ多糖症の新しい薬剤の開発と自然暦調査について

主任研究者:アドリア−ナ モンタ-ニョ
セントルイス大学小児科 アシスタントプロフェサー
共同研究者:戸松俊治
セントルイス大学小児科 教授

昨年に続いて、2度目の研究助成金を交付していただきましたことに、まずは関係者の皆様に心よりお礼を申し上げたいと思います。

さて、私たちの研究についてですが、その目的を簡単にご説明しますと、ひとつはムコ多糖症(MPS)の特徴的な症状である、骨の病変を改善するために、より効果的な治療薬を開発することにあります。

まず第一に、骨の変形などにおいて一番重い症状が現れる「ムコ多糖症IVA型」(モルキオA症候群)の治療法を確立することを目指しています。この病気の現在の治療は、炎症の処置や外科的手術による骨の問題の改善など、対症療法に限られていて、今のところ完治にいたる治療法はありません。

今回の研究で私たちは、開発中の「酵素補充療法」と呼ばれる投薬治療法の効果を最大にするために、新しく開発された酵素をテストをします。ムコ多糖症IVA型の患者に必要な自然型の酵素は不安定なものであるため、これまでは充分な量を作り出すことが、なかなかできませんでした。これを解決するため、天然の酵素にある物質をプラスする方法を考案。これにより酵素は安定したものとなり、治療薬が作りやすくなると考えられます。さらに、治療薬が骨にいきわたりやすくするように工夫された酵素も、ムコ多糖症IVA型のマウス(げっ歯類)モデルの上でテストされます。

第二の目標は、ムコ多糖症の新しい「経口薬剤」、つまり口から飲む薬の開発をすることです。
現在使われている、または開発中の薬剤である酵素補充療法は、毎週病院へ行って点滴をうけなければなりません。しかも1回の治療に4〜5時間もかかってしまいます。さらに、原則として、この点滴を一生続けなければならず、患者と家族にとっては大変重い負担になっているのです。

こうした苦労を少なくするためには、患者にとって、もっと簡単に使える薬剤を開発する必要があります。今回、私たちは新しい研究として、ムコ多糖症治療のための経口薬剤=飲み薬の開発に取り組み始めました。経口剤としては現在、大豆イソフラボン(ゲニスタイン)がムコ多糖症III型患者に試験的に使用されていますが、その薬の効果については、いまのところまだわかっておらず、ムコ多糖の合成だけでなく、他のホルモンなどへの影響も指摘されています。

ムコ多糖症IVA型(モルキオA症候群)は、ムコ多糖のなかの「ケラタン硫酸」という悪い物質が体の中にたまっていくことで、主に骨などに症状が出てくる病気です。
現在の酵素補充療法は、このケラタン硫酸を分解する酵素を点滴で体に入れることにより、体内にたまらないようにする治療方法です。

これに対して、今回開発する新たな治療法では、体の中で作られるケラタン硫酸の量を、ある方法で減らすことにより、体内の蓄積を抑えようとするものです(図1)。体の中でケラタン硫酸が作られるときには、いくつかの酵素が関与しています。私たちは、まずはその酵素が何なのかを特定した上で、その酵素の働きを抑えるための薬剤を見つけ、治療薬にしていこうという研究を行っています。既に、現段階で2つの遺伝子がケラタン硫酸の合成に関わっているのではないかと推定されています。

このように、たまっていくムコ多糖の合成を阻害する、という効果をもつ薬剤は、まだどこでも開発されていません。私たちがたずさわるムコ多糖症IVA型での治療法の開発が、他のムコ多糖症にも応用できるのではないか、との期待が高まっています。

図1.酵素補充療法と新しい治療法の違い

そして、三番目の研究課題は、ムコ多糖症IVA型患者の自然病歴を調べるためアンケート調査し、患者登録された380名以上のモルキオ患者のデータを編集してまとめることです。この病気がどんな風な経過をたどっていくのかを理解し、調査していくものです。これによって得られた調査結果は、未来の患者たちにとって、新薬・新治療法の開発のための貴重な情報を提供することになるでしょう。

私たちの研究室では、すでに12年間にわたりムコ多糖症を研究しており、モデルマウス(ムコ多糖症牽舛里欧短類)も研究用に飼育しています。
この研究の成果は、今後のムコ多糖症患者の治療のあり方に大きな影響を与えるものと考えられています。この研究が実を結ぶためにも、日本の皆さんからの研究助成は無くてはならないものです。善意の皆さんからのご支援を、これからもどうぞよろしくお願いいたします。


左から戸松俊治先生、アドリアーナ・モンターニョ先生