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医療は誰のためのものですか?

2006/08/27

8月19日(土)・・・東京にて、日本ムコ多糖症親の会の「交流会」が行われました。我が家は、昨年末に『ムコ多糖症4型A・モルキオ病』だと分かったばかりですので、今回の交流会が初めての参加でした。

うちの息子(颯太・6歳)を含めて8名のモルキオ病患者が来ていました。日本に30〜40人しか患者がいないとされるモルキオ病。「交流会」にこれだけ集まったのは初めてだったようです。こんなに集まったのには、理由があります。

来年末、アメリカで行われる4型A・モルキオ病の治療薬の臨床治験。その説明をする為に、スイスの製薬会社『イノテック社』の社長クリストフ・ハイゼン氏が、治療薬の開発者であるセントルイス大学の戸松俊治先生と共に来日する旨、事前に連絡があったからです。モルキオの患者は、交流会終了後に別途懇談会が設けられました。治療薬開発に取り組む製薬会社の社長に、自分の口で想いを伝えるチャンスです。

まず、患者を代表して、高校生の患者さんから、英語によるスピーチがありました。その後、戸松先生より治験の流れの説明があり、イノテックの社長のお話がありました。社長のお話を、戸松先生は、こう訳されました。
『私が、モルキオ病に関心を持ったのは、自分の友人の子どもが、モルキオ病だったからです。ですから、私は、友人の子どもを救いたくて、この病気の研究を始めました。』

私は、言葉を失いました。ビジネスではなく、親友の為に、仕事をしている・・・そんな、人が私たちの息子の病気の進行を止められるであろう薬を開発しているんだ・・・。そんな、暖かい気持ちから出来る薬を、息子にも使える日が来るんだ・・・。嬉しくて、嬉しくて、言葉になりませんでした。金儲けの為の薬では無いんだ!純粋に誰かを救いたくて出来ている薬なんだ!

私は、どうしても、伝えたかった事を、戸松先生に訳してもらい、社長に伝えました。
『うちの息子は、昨年末に病気が分かったばかりです。しかし、ラッキーな事に分かってすぐに、治験の話がありました。この、ラッキーな事を生かせるように、これからも、力を貸して下さい。』

これだけしか、話せませんでしたが、この中に沢山の想いが詰まっていました。なぜなら、お薬が間に合わず寝たきりになってしまった患者さんを知っているから・・・。元気だった娘さんが、病気が進行していき寝たきりになってしまった様を、写真で見せて下さったお父さんの気持ちが分かるから・・・。もっと、早ければ・・・。間に合わなかった患者さんの悔しい気持ちが分かるから・・・。私たちは、今病気が分かりラッキーなのだと思うのです。

そして、それを訳しながら、戸松先生は泣いて下さったのです。皆さんは、患者の為に泣いて下さる医師に出会った事がありますか?私は、初めてで、ビックリすると同時に、こんな素晴らしい医師の治療を受けられる私たちは幸せだと実感し、感動しました。

素晴らしい医師と、製薬会社の社長の手によって、モルキオ病の治療薬は開発されています。医療は患者の為でなければならないのです。私たちは患者本人の為の医療を提供できる医師に出会えた事を、心から、感謝しています。そして、この薬の治験が順調に行われ、迅速に国内で承認されるよう、これからも、努力して参りますので、どうか、皆様のお力を、私たちにお貸し下さい。

礒元さをり

戸松先生と颯太くん
戸松先生と颯太くん

戸松先生(左)と製薬会社「イノテック」CEO
戸松先生(左)と製薬会社「イノテック」CEO